31人が本棚に入れています
本棚に追加
「…どうかしました?」
「自分のことのように喜ぶんだなーって」
笑顔でいる理由を聞かれて、わたしは元気いっぱいに答える。
「三木先輩!神様はいるんですよ」
ぽかーんとした三木先輩に、奇跡の大発見をこっそり教えることにした。
「お願いしたら叶いました!」
それを聞いた三木先輩は、まさか、と漏らす。
わたしは笑顔で喜びを噛み締めて頷く。
二人なら効果は倍増。
「…なるほどねー」
「三木先輩も恋人が欲しいときは言ってください!」
「そうだな。…まあ、考えとくよ」
ひらひら手を振った三木先輩がドアを背に隠れかかる。うっかり見惚れていたのをいいことに三木先輩は振り返った。
「叶うといいな」
きょとん。首を傾げるわたしにエールが送られる。
「今度は自分の願い事、しっかり叶えてもらえよ」
笑いながら三木先輩が壁の向こうへ消えていく。
だんだん速くなってくのを感じて胸に手を当てた。頭にまだ残ってる京都の残像。桜の花びらがゆらゆら揺れて宙を漂って、わたしの足元へ落下した。
柔らかい陽気な光に包まれる。
春の夢物語。
…言ったら驚くかな。
でも。
三木先輩が知っている、わたしの知らない京都が見てみたい。
京都だけじゃなくていろんな場所でお互いの好きを語り合いたい。
できたてアツアツの物を頬張って、お腹いっぱいになって笑ったりしたい。
むくむくと育った心の蕾が今、綺麗に開き始めている―。
帰ったら香菜に電話しよう。
なんて言おうか迷いながら、鞄に忍びせていたお守りを見つめ微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!