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出発前のできごと
それは思いつきだった。
ごろんとソファに体を預けて空中に浮かんでみせた手から剥がれかかったマニキュアを見つめた。
女子力が乏しくなった哀れな指を弄んでると、香菜が途切れた会話から上の空な友人の姿を見事に当ててみせた。ピンポーン!クイズ番組の司会者がプラス10点をプレゼント。もちろん架空の存在だけどね。
「…ねぇ、あたし今大事な話してたんだけど」
「ごめんごめん。何だっけ?」
取り繕ったわたしに呆れたため息。幸せが逃げちゃうぞー、って、そっか。そういう会話だったね。
彼氏欲しいー、とか、痩せなきゃー、とかとか。
「一緒に行こうよ、京都」
え?京都?
きょとんとして聞き返すわたしに、香菜は「京都!ガチなやつね」とやや強めに言い放った。ぷっ。ガチなやつって。
相変わらず面白いなぁ、香菜は。
あられでも降ってきたのかと思ったじゃん。
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