知らぬ顔の反兵衛

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 むかーしむかし、あるところに“反兵衛(はんべえ)”といういつも仏頂面の男がおった。  ある日のこと、反兵衛はいつものように町へたきぎを売りに出かけた。  その道中、畑の中から鳴き声が聞こえたので目をやると、一羽のツルがワナにかかってもがいていた。  反兵衛に気づき悲しげな目で見つめるツルに、反兵衛は表情ひとつ変えず言った。 「なんだツル、助けて欲しいのか? だが、人様の畑に勝手に入るわけにもいかん。それにお前が興奮しおれをつついてこないとも限らん。これも運命と思い諦めることだ」  そうしてツルに背を向けすたすたと立ち去っていった。
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