冷たいあの人

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 隣で事切れている旦那の頬に触れる。硬いなと思う。強張った、突っ張った肌。死んで硬くなるのは関節だけじゃないのか。ふーんと納得して、そのまま首に触れる。流れていた血は止まり、ぬるりとした血液独特の感触が指先に残る。さっきまで暖かい血が流れていたというのに、今は冷たくなっている。少し嫌な気持ちになった。  ねえ、と声をかけても旦那から返事は無い。  「やっぱりあなたは冷たい人よ」  溜息混じりにそう呟く。この人のせいで、この部屋の空気も、私も、冷たくなってしまったわ。
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