ロボに恋した女子高生

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ほんの小さな町の、五年程前にできた古本屋さん。設立以来、大した繁盛は無く、のんびりと営業していたのだが、二週間ほど前から毎日長蛇の列ができるようになった。 「いやー、ほんとバカみたいに並んでるな!都会のスイーツ店じゃないんだから」 町外の高校に通う女子高生、芽衣(めい)は、店外にはみ出した行列に並びながら、呆れ顔で言う。 「いくら物珍しいからって、すごいよね。まあ、そんなとこに毎日毎日来てるあんたの方がすごいけどね」 芽衣は続けて、目の前に並んでいる、小学生の頃からの幼馴染である瑠衣(るい)に話しかける。 「まあね、私のこの想いはもう止められないから」 瑠衣は、毅然として言う。手には芥川龍之介の羅生門を持っている。 「何キモイこと言ってんのよ」 芽衣は瑠衣の肩を叩きながら言う。 「そんなこと言って、芽衣ちゃんもこうやってたまに私に付き合ってくれてるじゃん!」 「私は、本当に本が好きだから来てるの!全く活字に興味のないあんたが毎日古本屋にきてる…」 「あっ!ちょっと黙って!」 小言を言う芽衣を、瑠衣は慌てて制止する。列が進み、ようやく二人は店内に入れていた。 「きゃー!見えてきたわ!」 瑠衣は興奮して、芽衣の服の袖を掴んで飛び跳ねながら、小さな声で言う。瑠衣の視線の先にあるのは、接客をしている男性店員の姿である。 男性店員は、眼鏡をかけており、目鼻立ちが整った端正な顔立ちをしている。 「はぁ〜、やっぱりかっこいいわ…」 瑠衣は恍惚とした表情で男性店員を見つめている。 「ねっ、芽衣ちゃん!久々に来た甲斐あったんじゃない!?」 瑠衣はキラキラした目で芽衣に言う。 「んー、まあかっこいいのは分かるんだけどさ…【ロボット】じゃん」 芽衣は苦笑いをしながら言う。 そう、実は男性店員はロボットなのである。発明家でありながら、趣味で古本屋を一人で営んでいた店長が、二週間前にロボット店員を導入したのだ。レジの下には、[ロボット店員始めました]と書かれた貼り紙が貼られている。
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