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ユウキが私の部屋へ転がり込んで来て、この狭い部屋で同棲を始めたのも、私達にとっては必然の事だった。
人は、どうして気持ちが変わるのだろうか。
"どうして出会った頃と同じではいられないの?"
あぁ、まただ。
また、人気アーティストの歌声が私の想いとリンクする。
感情の波に押しつぶされそうになるから、思わずプツリとテレビを消した。
すると、なにもかも遮断されたような静寂が訪れた。
私は、本当に1人になったのだ。
いつからだったかな。
ユウキが冷たくなったのは。
「今日は何時頃帰る?」
「今日は遅くなる」
小さなケンカが多くなって、愛の巣だったこの部屋は息が詰まりそうになった。
ユウキもだんだん外に出て行くようになり、真夜中に帰ってきたり、朝方帰って来る事もあった。
「ねぇ、誰と連絡とってるの?」
「友達」
いつからだっただろうか。
ユウキが肌身離さず携帯を持つようになったのは。
ベランダに行く時も、お風呂に行く時も、トイレに行く時も。
「最近冷たくなったよね。どうして?」
「お前の気のせいだろ?俺は変わらないよ」
「女と会ってるんでしょ?」
ユウキは携帯を触りながら、私の言葉に表情ひとつ変えなかった。
「別れる?私達」
絞り出した言葉を伝えた時、胸が張り裂けそうに痛かった。
とっくに気づいてるのよ。
"気のせいだ"とか、"ユウキを信じてる"とか、ユウキの変化を見てみぬふりして過ごしてきたけど、もう限界。
"そんな女の事なんて何も気にしてないし、私は1人で平気なの"
きっと、ユウキの瞳に映る私はそんな風に見えているんだろう。
強がって見せてしまう私だけど、本当は淋しいって心の中で叫んでる。
私は、あなたがいないとダメなの。
分かってよ。
私を捨てないで。
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