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「アミと別れたくない」
ユウキは泣きそうになりながら懇願した。
連絡を取っていた女とは遊びだったって。
アミを愛している。
俺はアミだけを心から愛している。
最近アミとうまくいかなくなって、出来心だったと。
…………だけど、裏切った事には変わりないじゃない。
バカな女だと思われるよね。
それでもまだユウキを好きだなんて。
そして安心してしまったんだ。
まだ、愛されてるって。
「また戻れるかな、俺達」
「戻れるよ」
「アミとやり直したい。あの頃みたいに
また幸せに過ごしたい」
ユウキは私を力強く抱きしめた。
身を焦がすほどの激しい愛が、息苦しい。
もしかしたら、ユウキも同じ気持ちだったのかもしれない。
ここは水槽のようで、ずっと潜っていると苦しくなるのかな。
女の子と遊ぶのは、息つぎをしている感覚なんだろうか。
そんな事を、ベランダで夜の風に当たりながら思った。
夜風は冷たくて、気持ちよかった。
フォトフレームに飾られた二枚目の写真の2人は、変わりなく笑っていた。
だけど、心にはヒリヒリとした傷が残った。
まるで、火傷の跡みたいに。
いつかは、綺麗になって消えるのかな。
この痛みも、無くなるのかな。
フォトフレームに閉じ込められた2人を見ながら、1年前とは違う感情を抱いていた。
うまくいかない事があれば、できてしまった溝を埋めようとする。
ユウキはまた優しくなって、私も何も無かったかのように過ごして。
この関係が壊れてしまわないように。
またあの頃と同じ2人に戻れるように。
キスをして、抱き合って。
愛に溺れて、傷はペンキのように上から塗りつぶすの。
そうして、消えてしまえばいい。
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