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久しぶりに「鏑木くん」と呼んだ気がした。私たちが付き合う前は、苗字呼びだったけど、別れてからは一切話さなかったから、本当に久しぶりだ。将暉が「うん」と静かに答えると、返事してくれたということに驚きつつ、嬉しさを覚える。
「三枝さんも、久しぶり」
「あ、うん、久しぶり」
将暉も私のことを「三枝さん」と呼ぶと、どこか距離がある気がして、少し寂しい感じもする。でも仕方が無いのだろう、と思った。将暉は唇を舌で舐めながら、俯く。将暉が困っている時の癖だ。変わっていない。
私は視線を多方向に動かすと、何を話すかを考える。
「三枝さん、あそこでバイトしてたんだ……」
将暉の方から話しかけてくれたことに、私は驚いて「あ、うん」と何だかそっけない返事になってしまった。
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