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モブ子の会話
(モブ女子しかでてきません)
「あのさあ」
「うん?」
「あたし軽音サークル入ったんだけどね」
「え、楽器弾けるの?」
「んー、ピアノならちょっと。でもギター弾きたくてさ、とりあえずサークル入ってから先輩に教えてもらってるんだけど、先輩にめちゃくちゃギター上手い人がいるのね。で、その人にもたまに教えてもらうんだけど、その人すごいクールっていうか……正直けっこう素っ気ない人で」
「うんうん」
「まあそういう人なんだなーくらいに思ってたんだけど、その人が友達と二人で学食でごはん食べてるとこたまたま見たんだけど、そのときめちゃくちゃ楽しそうだったのね。この人、こんな顔して笑うんだ……! みたいな。すごいびっくりして」
「なに、好きになっちゃったの?」
「いや、そういうことじゃなくて。その二人の様子がおかしいんだよ」
「どういうこと?」
「仲良さそうっていうか、仲良さそうっていうレベルじゃないっていうか」
「え、待ってまず先輩は男?」
「うん」
「そのいっしょにごはん食べてる友達は?」
「男」
「ちょっと詳しく聞かせて?」
「なんかね、もう空気がおかしいんだよ。高岡さん、あっ先輩のほう高岡さんっていうんだけど、高岡さんってふだんすごい無表情だし誰が話しかけても基本素っ気ないし、笑ってるとことか見たことないのにその人といるとき食事中ずっと顔ゆるみっぱなしみたいな。笑顔っていうか、いやもう笑顔っていうよりでれでれしてる感じ? 子煩悩なお父さんが娘を見守ってるみたいな」
「相手のスペックは?」
「喋ったことないからわかんないんだけどー、見た感じけっこう小柄。顔もかわいい系っていうか幼い感じ? 狙ってんのかわかんないけどなんかよくぶかぶかのカーディガンとかパーカー着てて萌え袖なんだよね」
「え、ちょっと待って、もしかしてその相手の子ってフットサルサークルの人?」
「あ、たぶんそうかも。黒髪の色白の」
「えっそれ伊勢くんじゃん! 伊勢くん、わたしとゼミ同じなんだけど、よく校内で派手なパーカー着てる人といっしょにいるから仲良いな~って思ってて」
「あっそれ高岡さんだ!」
「あっやっぱり?」
「っていうかやっぱりあの二人おかしくない? なにあれ?」
「わたしこの間あの二人がナチュラルにいちゃついてるとこみたんだけど」
「なにそれ」
「ゼミがすごい長引いた日があったんだけど、終わったあと教室の前にその先輩が迎えに来ててさ、なにさんだっけ?」
「高岡さん」
「そうそう。そんであっ高岡さん! って伊勢くんがすっごいうれしそうな顔したからわたしもえっ? って思ったんだけど、高岡さんがもーまちくたびれた~ってなんか甘える感じっていうか、ふにゃふにゃした感じで言ってて、伊勢くんも笑いながら『すいません、はやくごはんいきましょ』みたいなこと返してて」
「えっ付き合ってんの?」
「だよね!? 付き合ってんのかな!?」
「やばくない? なにその空気」
「あとわたしが一番なにこれって思ったのは、フランス史の授業でたまたま後ろに伊勢くんと高岡さんが座ったときがあって、高岡さんが『晩メシなにがいい?』って聞いてたからもしかしてこの二人毎食いっしょに食べてんの? って思ってたら伊勢くんが『ハンバーグ』って言って、それに対して高岡さんが『えー、ハンバーグ作んの時間かかるじゃん』って」
「えっ作る前提なの!?」
「そうなの! ごはん食べ行くとかじゃないんだ! 高岡さんが作るんだ! ていうかいっつもいっしょに作っていっしょに食べてんの!? って思って!」
「えっ、自宅に呼んでるってこと? わざわざ作りに行ってるってこと?」
「さあ、分かんないけどどっちにしても怪しいよね」
「あ、ちょ、ちょっと待って、やばい」
「えっなにどうしたの」
「やばい、すごいこと思い出した」
「なになにこわいこわいどうしたの」
「今唐突に思い出したんだけどさ、前にサークルの先輩と高岡さんが喋ってるときに……なんだっけな、宅飲みしようみたいな話かなんかで、誰か部屋貸してくれる人探してるときだったと思うんだけど」
「うん」
「先輩が高岡さんに『高岡んちで宅飲みしたいー』って言ったら、高岡さん『おれ今同棲しててほかの人間家にあげたくないからだめ~』みたいなことうれしそうに言ってたんだよ、そんでうるせー死ね! とか言われてて」
「あれ、そうなの? じゃあ高岡さんちで彼女さんがごはん作ってくれるとかなのかな」
「いやいやいや違う違う違う」
「なに? どゆこと?」
「……伊勢くんと高岡さんが同棲してる説」
「「優勝じゃん」」
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