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「観点次第で悪役とヒロインが入れ替わるのが恋愛だよ」
「え? 」
「恋愛なんて幸せになれるのは両思いの2人だけ。ほかは全部脇役。そして脇役からすればヒロインが悪役ってこと」
「なるほどね……」
脇役かぁ。自分が、主人公というか、ヒロインと考えるのだろうか。
「誰だって自分が可愛いし、ヒロインがいいに決まってる。そんなに思いつめないで。それに、副社長にとっては栞が絶対的正ヒロインなんだから」
「なんか、乙女ゲームみたい」
由希の考え方がしっくりくると同時に乙女ゲームのヒロインと悪役令嬢が頭をよぎった。私がそう言うと由希思ったより目をキラキラさせて食いついた。
「バレた? 実は最近ハマっちゃってさぁー」
そう言いながらスマホをササッと操作して、ババーンっと画面を私に見せてくる。スマホの中にはかっこいい男の子たちのイラストと、可愛らしい女の子のイラストがあった。みんなスーツだからオフィスもの?
「もうね、カイトくんがカッコよすぎてっ」
由希は語りながら一人で悶え始めてしまった。由希はあんまりなにかにハマってるイメージはなかった。ここまで熱狂してるのは珍しいかも。
「どうしたの、乙女ゲームなんて珍しい」
「んー? 私の好きな人が鈍すぎて現実の恋愛が嫌になったからかなぁ」
「え!? まっ、なにそれ!? 由希って好きな人いたの!?」
いつも由希の恋バナははぐらかされてばっかりだったので驚く。まさか好きな人がいたなんて。私が驚きすぎたせいか、由希は心外だという風に眉を潜めた。
「私だって女の子なんです〜」
「いや、知ってるけど!! 今そんなに恋愛興味無いのかと思ってた」
「そのつもりだったけど、好きになっちゃったもんは仕方ないでしょ」
「それは同意」
自分も諦めたくても諦められない気持ちは知っているため素直に頷く。でも、分かってないなぁっと由希は首をする。
「私は脇役Aでしかないの。ヒロインにはなれない」
「そんなことないよっ」
「あるんだなーそれが」
なぜかすごく悲しそうな顔をしてそうだと言ってきかない由希はわしゃわしゃと私の頭を撫でた。それ以上言うことはダメな気がした。
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