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「なるほどね。これまた大変だったね、栞」
「うぅ、ありがとう由希。もう由希なしで生きていけない」
「何言ってんの、モテモテで羨ましいわ」
由希から連絡が来て数日後、久しぶりにランチに来ていた。そこで、貴弘に告白されたことや広さんと会ったことをつらつらと話すと、由希はコーヒー片手に呟いた。嫉妬みたいなことを由希が言うのは珍しい気がした。しかもあまり冗談に聞こえない。
「モテモテでも、いいことないよ」
私は苦笑いして誤魔化すと、それを察したのかむにっと由希にほっぺをつねられる。
「何、本気だと思った? まぁ、モテモテは羨ましいけど、あの面倒くさそうな2人は遠慮しておくかなぁ」
なんて、由希は笑いながら言う。上手く有耶無耶にされた気がするけど、いつもの雰囲気に戻ったことに安心して、不自然さに気付かないふりをした。
「それにしても難儀よね。西條さんが諦めてくれればいいのに、そんな虫がいい話ないか」
「虫がいい、ね。あっちからしたら私が浮気相手だもん」
心の中にドロっとしたものが流れ込む。そう浮気相手なの。調子に乗ってはいけない。どれだけ幸せになろうとも、私は自分を正当化出来ずに黒い部分がずっと心の奥底にある。
「こーんなに純愛なのにねぇ。お互い一途すぎて傍から見てたら尊敬するレベル」
「そう? でも、純愛だって言ったところで、見え方は変わらないよ」
目を伏せる。自分で自分の傷をえぐる。自分を許すなと言うふうに。でも、そんな私に由希は、それは違うというふうに首を振った。
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