choice11 正規ルート

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 部長に連れられてニ軒目までご馳走になったものの、結局久遠さんとは大した会話を交わさずに終わりを迎えた。 「今までありがとう。お疲れ様でした」 「今まで、お世話になりました」  部長と課長を見送って、 「桐生さん、絶対また会いましょうね!」 「桐生ちゃん、お元気で。またキャンプ行こうな~」  佐久間と坂下と、 「桐生、本当にお疲れ様。今までありがとな」  その声に、ようやく真正面から顔を合わせて、思うのは 「……こちらこそ、ありがとうございました」  ああ、すきだな。  そんな刷り込まれたような感情を未だに燻らせている。  久遠さん達が揃って駅へ向かう姿を見届けた私は、くるりと背中を翻した。  ……よかった。泣かずに済んだ。  でも、心と身体がずっとふわふわしている。飲み過ぎたお酒のせいだろうか。  正直、これが最後だって実感が湧かないのだ。  送別会は新宿だったので、駅に背を向けて夜道を歩いていた。未だ宿泊してるホテルの最寄り駅だ。この道も大分見慣れてきたけれど、家は先日決めたから、来週にはもう引っ越しだ。  なんだか、時が経つのに、心が追い付いていない感覚がする。 「――待って、」 「っ、なん、ですか」  背後から腕を引かれて、びくりと顔を上げれば、走ってきたであろうその男は、荒い息を吐きながら私を見下ろした。
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