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僕の紅花ちゃん(ヤンデレがっつき童貞×チャラ高校生 / 無理やり)
教室に入るなり背中に体当たりをくらった。拓斗の体当たりなんて、子猫がじゃれついてくるような甘い痛みでしかないのだけれど。
「裕也ぁ、おめー昨日帰ったべ」
「え?」
「5限と6限いなかったじゃん」
「あー……うん、帰った」
「はあ? なにしてんのお前」
「だるかったから」
「お前な、メシの後の数学と物理なんて全員だるいんだよ。ぬるっと帰ってんじゃねぇ」
「お前はちゃんと授業出たの?」
「出たよ、褒めろよ」
「えらい」
腕をのばして頭を撫でてやる。時間をかけてセットしている髪を思いっきり乱してやると、拓斗は目を細めて大人しくなった。本当に猫のようだ。かばんに入れて持って帰りたくなる。
「お前さー、ほんとにえらいと思ってる?」
「思ってる思ってる」
「じゃあなんか奢れや」
「いーよ」
「お前いいっつったな! 天一の大盛り天心飯セットに単品ギョーザつけるからな!」
「いいよ」
「まじか、本気だぞ俺」
「いいって」
放課後の貴重な時間をもらえるのなら、ラーメンくらい安いものだ。腹が落ちつき満足した拓斗はきっと、「俺んち来る?」と聞けばなんの危機感もなく「いくー」と返すだろう。ばかみたいな面で。
放課後はなかなかやってこなかった。耐えきれない俺は何度か部室に逃げた。ようやく出向いたラーメン屋で麺をすすりながら、拓斗は思い出したようにつぶやいた。
「そういや裕也は昨日帰ってなにしてたの」
正確には、5限のはじめのうちは授業に参加していた。その後もすぐ帰ったわけではなく、やはり部室にいたのだ。俺は水泳部なので、体育館裏の狭い場所にある更衣室と一体になった部室に自由に立ち入ることができる。日中、人気のないその場所は、俺の密かな隠れ家になっていた。
「なんか……だるかったし、頭も痛かったから寝てた」
「あ、まじか。大丈夫なん?」
「ん、もう大丈夫だよ」
昨日、5限がはじまったときはまだ教室にいた。ふと見ると隣の席の拓斗が早くも眠りについていた。そのとき、はじめて、寝顔を、見てしまったのだ。数学の教師には頭が痛いと告げ、部室にかけこんだ。
部室ではひたすらオナニーをしていた。三回くらいぶっ通しで。三回目のイくとき、あまりに夢中になりすぎてよだれが垂れた。それでさすがにやばいなと自覚し、教室に戻ると荷物を持って早退した。拓斗はまだ寝ていた。
「昨日桜花女子高と合コンあってさ」
「ああ……そう」
「お前もくればよかったのに、まあ体調悪いんじゃしょうがねぇけど」
「いや……俺はいいよ。それよりお前は? いい子いた?」
「いんやー、いなかったね」
中学までは、あまりそういうことに興味がなかったと思う。高校に入った途端、それは急にやってきた。拓斗のようなタイプと仲良くなったことも原因のひとつだ。いや、拓斗に出会ってしまったことが、他でもない原因だ。水を飲んで一息ついた拓斗が、呟いた。
「あー、セックスしてー」
そうなのだ、セックスしたくてたまらない。学校でも人目を盗んでオナニーしてしまう。拓斗の顔を見ているだけで、耐えきれないのだ。
食事を終えると予定通り自宅に連れ込んだ。予定通り母親はいなかった。予定通り、行動に出ることにした。
「ちょ、なに……っ」
「……」
「おいっ、やめっ、ん……っ」
拓斗をベッドに押し倒し、覆いかぶさって唇を奪った。あーギョーザくさい。はじめてのキスはレモンでもイチゴでもなくてギョーザの味だった。それで余計に興奮した。背中がびりびりするくらいに興奮した。
「は、え、な、なんなのよお前!」
「……」
「ちょ、聞けや!」
キスは甘くないし、拓斗は理想通り抵抗の言葉を吐いてくれる。その上で、顔色の変わってしまった俺の前で、腕や足を振り回しての抵抗には至らないのは嬉しい誤算だった。
「拓斗、セックスしたいんだろ?」
「は……?」
「だったら俺がしてあげる」
ほら、リードしてあげるときは、正当な紳士でなければいけないから。くちもとに愛憎の笑みを浮かべ、拓斗を見おろす。
「や、おま、意味わかんねぇから」
「うん」
「俺ゲイじゃねぇし、女の子じゃなきゃ勃たねぇから、お前にされたところで……っ」
俺はなにか言っている拓斗を無視し、手早くベルトを外した。下着とズボンを膝のあたりまでおろし、さらされた性器をすかさず口にふくんだ。
「ちょ……」
「……」
「ん、あ……っ」
拓斗は困惑している。だから舌とくちびると吐息と熱と、持てるかぎりすべてをつかって拓斗の戸惑いを押し流した。じゅるじゅると音をたて吸いつき、先端のくぼみをしつこく責めるとじわじわと硬度が増していった。
「勃ったよ」
「な……っ」
「勃つんじゃん」
「そ、そんなんされたら誰でも勃つだろ!」
「さっき女じゃなきゃ勃たないって言ったじゃん」
「そ、それは……」
拓斗は言い訳を考えている。けれど都合のいい答えはみつからない。拓斗は下から数えたほうがいいくらいばかなのだ。愛おしい。噛んで飲みこんでやりたくなるくらい、愛おしくてたまらない。
「勃つんだったら、もっとしても大丈夫だよね」
膝あたりまでさげていた制服と下着を完全にとりはらった。拓斗はなにか言っているが、頭のなかが沸騰していてよく聞こえない。足をもちあげ、さらされた小さな部分に触れた。
「ちょ、待てよおい、やめろ」
「……」
「待って、裕也、待って……!」
唾液で濡らした中指を突き立てた。すごく、きつかった。もっとするする入るんじゃないかと思っていたのだ。自分まできゅんと縮こまりそうなくらい、その場所は固かった。
「あ……や、い、いたいっ」
「……」
「やめて、裕也、ほんとお願いだから」
俺は優しいし今回はリードしてあげるつもりだから、きちんとほぐしてあげる。本当は今すぐぶちこみたいけどそんな非道なことはしない。何度も抜き差しして、やわらかくなるまで繰り返す。
「うぅー……」
拓斗は掌で顔を覆ってうなっている。恥ずかしいかもしれないけれどできればその顔を見せてほしい。もっと気持ち良くなれば自然に掌もどかしてくれるかなと思い、服を脱いで性器をとりだした。
「え、ちょ、待って、ほんとまって」
「ん……?」
「お前、まさか、いやちがうよな、え?」
「んー……?」
「あ、ちょ、……ああっ!」
逃げだそうとした腰を掴んで、強引に押し込んだ。拓斗はおどろくくらい大きな声を出した。母がいない日を心待ちにして良かった、と思った。中はとろけるように熱く、ものすごく狭かった。内側の壁が、俺を責めるように、しかし確実に絡みついてくる。俺の方までちょっと痛いと感じるくらいにきゅうくつなのだから、きっと拓斗もつらいだろう。つらく痛いのは可哀想だから、がんがん腰を振って、はやく気持ち良くさせてあげたくなる。
「あ、あぅ、ぅああ!」
「ん……拓斗……」
「あぁ、あ、っんあ、あ」
痛みを伴った感覚によって、拓斗はようやく抵抗の仕方を思い出したようで、とつぜん腕を振り回した。けれどそれは駄々っ子の抵抗のようなものでしかなかった。試しにおさえてみたらそのまま動かなくなった。腕を固定されてしまえば、絶望の表情を隠すことさえできない。この世の果てみたいな絶望が、桃色の頬に張り付いている。美しいと思った。
「ああ、んああ、あ!」
「はあ……かわいいね……」
「あぅ、あー、あぁー!」
セックスしたい、だなんて軽々しく言ってしまったせいでこんな結末を招いてしまう。拓斗はほんとうにかわいそうだ。ごめんね。痛いよね。悲しいよね。つらいよね。ごめんね。頭では真摯に思うのに、対照に性器はさらに固くなっていく。かわいいかわいい拓斗をつらい環境に陥れている。そう実感すると、いきそうになる。
「あっ、うあー、あっ!」
「拓斗……きもちい?」
「あー、あっ、あぁあ!」
「きもちいいって言って……」
拓斗が女なんか興味なくなればいいのに。女の裸なんか気持ち悪くて、裕也のチンポがないと興奮しないしイけないんだよね、どうしよう、って悩んでしまえばいいのに。誰にも相談できぬつらさに打たれて夜な夜な枕をせつなく濡らせばいいのに。
独りよがりな思考が加速するほど、ぞくぞくするくらいに興奮した。脳みそがんがん揺さぶられるような快感の中で、射精した。人生でいちばん気持ちの良い射精だった。
拓斗は泣いていた。
「も……っ、なんなのお前ぇ……っ」
「……ごめん」
「ぜってえ許さねぇからな……!」
信頼していた友人に裏切られ、子供みたいに顔中真っ赤にして泣いている。本当は俺のこと大好きで仕方ないんだよな、けれどばれたくないから泣いているんだ。本心を見せたくない猫みたいに。
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