124人が本棚に入れています
本棚に追加
21-5.
「あぁ、またな」
倉本が気を遣ってそんな風に言ってくれた。
それから気をつけて周りの話を注意して聞いていると女子達はどこから
そんな詳しい話を聞いて来るんだよって言いたくなるくらい、黒崎さんの
結婚にまつわる話をよく知っていた。
特に休憩時俺は耳をダンボにして聞き耳を立てた。
いや、耳をダンボにすれば凹むだけ、聞くんじゃない竜司
自分に止めろと命じたが、ジャンボになってしまった耳は
俺の言う事を聞いてはくれなかった。
設樂課長の弟さんも所謂バツイチで、似たような境遇の
ふたりを課長が引き合わせたようだ。
時期的にもしかして二股されていたんじゃないかって思う
くらい早い時期に紹介されていたようだけど、黒崎さんの
心の中では、別れを言い出すもっと前に心の中で俺達のことに
決着をつけていたみたいだし、そこのところはないと信じたい。
それに俺自身、別れを切り出された後ひたすら凹むばかり
で、やり直したい・・家を出てでも君と結婚したいと・・
まぁ何のアクションも起こさず諦めてしまった訳だから
彼女を責める資格なんてないさ。
誰もいない所で"あーーーーっ!!"と大声で叫びたい気持ち
だった。
ヘトヘトになるまでその辺を駆けずり廻って叫びまくって
何も考えられないほど疲れて眠っていたい、そう思った。
毎日仕事に行く足取りも重く食欲も出ず、失恋を引きずって過ごした。
気が付くと、夏を迎えていた。
2021.10.16 11/9
最初のコメントを投稿しよう!