Happiness 幸福というもの

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3. " Choice 選択 "  政恵は言った。  「私はあなた方の結婚には反対ですよ。」  「賛成していただけるよう頑張って参ります」 と、それを受けたあかねは健気にも返事した。  情けないことに、父も竜司も当たり障りのない言葉を発しただけで 政恵の言動に、そしてあかねの返事に対しても、何のフォローも 出来なかった。  その後、食事を済ませたあかねが洗面所に行く為席を立つと 政恵も同じく洗面所に向かった。  洗面所から戻って来たふたりの様子が対照的だった。  あかねは心なしか元気を失くしたように見え、母親の政恵は すこぶる機嫌が良かった。  また何か辛辣なことをあかねに言ったのかもしれないと心配する 一方で、竜司はあの辛辣な政恵の質問に涼しい顔で 認められるよう頑張りますと返していたあかねのことだから 心のどこかで大丈夫だろうと高を括っていた部分があった。  あかねがどれ程の痛手を受けていたのか、推し量れるほど 大人になりきれていない竜司は、決して母親の言動を良しと しているわけではなかったけれど、母親の気持ちが変わるまで あかねとふたり、認めて貰える日を待つつもりでいた。  あんなに頑なに会わないと言ってた政恵が今回あかねに会う と言ったのだ。  時間と共に人の気持ちも変わる、変われると思っていた。
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