Happiness 幸福というもの

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22. " Break 絶縁 "  夏の終わりに黒崎さんのオメデタのニュースと併せて退職することを 知った。  春先の結婚が決まった頃、いろいろ知り得たことがあった。  この結婚には設樂課長の押しがかなりあったこと 家族ぐるみという形での紹介があった後、弟さん本人はモチロンのこと 課長やご両親達からのモーレツなラヴコールがあったこと。  皆から祝福されて結婚した黒崎さんは、きっとご主人やご家族から 大切にされているのだろう。  妊婦になり、来年のまだ寒さのぬけない頃に出産を予定している そんな設樂家は輝かしい年を迎えるにちがいない。  当初はもっと早くに母からの呪縛から逃れていれば、あかねとの 明るい未来があったかもしれない、そういう思いに捉われ、やりきれ なかった。  だが今は違う。  笹原家から受けた仕打ちと設樂家から大切にされている状況を 目の当たりにしてみれば、黒崎あかねの為には、これで良かったのだと 心から思えるようになった。  人は心の持ち方ひとつで他者を幸せにも不幸にもできる。  自分の母親は残念ながら他者を不幸せにしかできない体質のようだ。  やっと黒崎あかねとのことを自分の心の中で本当の意味で決着 つけられるようになった頃、政恵があかねさんとでもいいわよと、何を トチ狂ったのか連絡してきた。  「どうせ、あかねさんまだ独り身でしょうから私が許したと言えば 喜んであなたの元へ帰ってくれるわよ」
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