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22-2.ore
「遅いんだよ、もう。何言ってるんだ、いい加減にしろよ。
彼女はとっくに再婚して子供にも恵まれて、その上相手のご両親からも
とても可愛がられて幸せな結婚生活送ってるんだから・・。
母さんがバツイチと蔑んだあかねさんは他所の人達からは、熱望される
ような優良物件だったんだよ。
見る目を持たない親を持った俺は哀れなもんだよ。
年上の女なんて子供も持てるかどうか判らないって言って反対したよね。
どうだいっ、あかねさんは来年には可愛い赤ちゃんが生まれておかあさんになるよ。
対して俺はどーだい?な、母さん俺は?
妻も子もなくて寂しいもんだよ。
俺の未来の予想つかなかった?
人の心はそんな上手くいかないってこと、そんな簡単なことが
判らないんだ、アンタって人は」
・・・・・
本当は判ってる。
自分にいくじがなかったせい。
予測があまかったせい。
自分こそがあかねさんを軽く見てたんだ。
半年や一年、待っててもらえるはずだってね。
彼女を熱望する誰かがいるなんて思いもしてなかった。
母さんだけのせいじゃないって判ってる。
もっとちゃんと彼女と向き合って、彼女の手を強く握って放しちゃあ
いけなかった。
欲しいものは、大切なものは、手放しちゃいけなかったんだ。
この先あれほどの情熱で人を好きになれる日はもう二度と来ないだろう。
俺の後悔の言葉に母は何も言えなかった。
政恵のことを多少なりとも不憫だと思わなくもなかったが
先ほどの、どうせ発言で迷いは払拭された。
兄や父に続き自分も完全母親の前から去ること(連絡先不明)を決意した。
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