Happiness 幸福というもの

63/70
前へ
/70ページ
次へ
23. " Restart 再出発 "  その後、竜司はそれまで勤務していた役所を辞めた。  半年余りは旅を兼ねて住む場所を捜し歩いた。  住む街が決まると、勉強をし直して試験を受け直し、再び小さな田舎町の 役場で勤務することになった。  昼時になると、役所から5分と離れてない食堂でいつも昼食を摂る。  その食堂ではまだ少女に見える程、子供時代の名残を色濃く残している 山内真砂19才が、毎日元気で明るくチャキチャキ働いていた。  真砂には泉という8才の弟がいて、学校が終わると自宅には帰らず店に 帰って来ているようで、とても仲が良い。  いつも昼食を摂る時間には、弟はまだ学校で、見かけることはないが 外回りで昼食の時間がずれ込んだ時などに、時々姉にまとわり付いている 弟を目にすることがある。  その日も外回りの仕事で昼食を摂るのが遅くなった。  泉が死にそうになって凍えている仔猫を拾って来た。  飯屋の人の善い夫婦も姉、真砂と一緒に顔を出し、どうしたものかと 思案に暮れていて、泉と真砂はきょうだい揃ってどーしよう、どーしようと オロオロしている。  オンボロアパートは飼えないのだろう。  仔猫が可哀想で捨て置くことも出来ず、悩む姉弟。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加