Happiness 幸福というもの

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23-2.    様子を伺っていた竜司が助け舟を出す。  「仔猫、俺の家に置いてあげるよ。  だけど世話までは大変だから仔猫の様子はちゃんと毎日見に来て くれないかな。  鍵は作って渡しておくから、なるべく世話しに来てくれ。  君達が世話出来ないときだけは、仕方ないから俺が世話しよう。」  瘦せっぽっちで小さめの姉、真砂は弟、泉と併せて竜司の 目からは子供のように見えるので、どっちが仔猫なんだか~と、ひとり ごちた。  ふたりが仔猫のことで必死に頭を悩ませている姿を、竜司は よるべのない仔猫に重ね合わせて見ていた。  聞くところによると真砂たちは母親がシングルマザーで その母親も過労が原因で昨年亡くなったのだとか。  真砂は小さな弟がいるので普通の企業にOLとして就職 出来なかったのかもしれない。  アルバイトでボーナスも出ず、生活は苦しいだろうにふたり 共明るくていい子達だ。  雇い主の夫婦がふたりのことを何くれとなく気にかけてくれる 善良な人たちなのが救いだ。  仔猫の件で姉弟たちと繋がりが出来た。  これも何かの縁、自分は独身で自由のきく身、猫共々このちっこいふたり の面倒も見てやらねばなるまいと心密かに思っている。  
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