24.夜明けまで

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24.夜明けまで

「・・・フリーズすんな」 仁科(にしな)先輩の上で、俺は緊急停止した。すでに臨戦態勢の下半身はどうにもならないが、先輩の言葉に怖じ気ついてしまった。 「いいん・・・ですか・・・その、俺が・・・」 先輩はクロスした腕の隙間から俺を盗み見ている。やっぱり見たことのない顔をしている。 「処女もらって・・・ってか?」 「・・・っは、はい・・・」 「男とヤったことはねえからな・・・何とも言えねえけど、お前は俺と・・・したいんだろ」 「それは!・・・っはい、そう、です」 見透かされてると思った。 俺はゲイだが、男性の恋人が出来たことがない。人生でたった一度、なんとか一般人と同じことが出来るようになりたくて、女性と関係を持った。結果はというと、出来たことは出来たのだが、家に帰って吐いた。 だから、果たして自分がちゃんと、先輩を抱けるのかどうかなんてわからない。 「俺は・・・・・・その、こんな状況で今更なんですけど・・・経験が少なくて・・・」 「・・・じゃあ逆にするか?」 「えっ」 「無理だろ」 「・・・それは・・・」 「俺はどっちでもいい」 「先輩!」 「勘違いすんなよ」 先輩は腕を解いて、俺を見上げた。頬は赤いが、強い目で俺を射る。 「・・・・・・誰でもいいわけじゃ、ねえぞ」 俺が口をぱくぱくさせていると、下から仁科先輩の腕が伸びてきて、首筋に触れた。 そして何でもないように言った。 「あんま言いたくないけど」 「は・・・い?」 「男に悪戯されたこと、あんだわ。だから・・・もしかして、うまくいかねえかも、だけど」 「えっ」 「・・・・・・その記憶、お前が上書きしてくんねえか」 「・・・ぅあ・・・っ・・・」 俺は、仁科先輩のすがるような瞳を見て、それまでの不安がどこかへ吹っ飛んでしまった。 経験の浅さなどどうでも良くなった。 何度もキスをして、火照ったその肌に舌を這わせた。 先輩はやっぱり顔を隠して、声を出さないように唇を噛んでいた。 「先輩・・・苦しいですか」 「違げ・・・・えよ・・・っ・・・」 俺の舌が触れると、日焼けした厚い胸が反り返る。昔からガタイが良かった先輩は、30を過ぎても引き締まっていて、贅肉もついていない。 乳首を舌で弄びながら、デニムのファスナーを下ろした。下着の中で硬くなり始めている先輩の性器を目の当たりにして、俺は少し安心した。 「触ります」 「いち・・・いち報告・・・すんな・・・っん・・・」 布の上から軽く撫でるだけで、先輩の腰がびくんと反応する。下着に滲む液体が、先輩の身体が感じていることを教えてくれる。 俺は先輩の顔を見ながら、下着の中に手を差し入れた。 「ぁ・・・あっ・・・」 耐えきれず先輩が喘いだ。普段より一オクターブ高い声に、俺の下半身がぞくぞくする。 信じられない。 今、俺の手で仁科先輩が、感じて声をげているなんて。 想像しなかったわけじゃない。 ガタイのいい先輩に抱かれる方が簡単にイメージできた。 でも、実際ここにいる先輩は色っぽくて、こんなことを言うのはおかしいかもしれないが、こっちの方が自然に思ってしまう。 「・・・な・・・りひと・・・っ・・・あ・・・ぅ・・・」 俺の手の中で、先輩のそこはみるみる張りを持った。 そのまま加速しようとすると、先輩の手が伸びてきてストップをかけられる。 「・・・先輩?」 「なん・・・で・・・俺だけなんだよ・・・っ」 「た・・・多分、初めては挿れられないと思うんで・・・今日は・・・」 「じゃあお前も・・・してやるよ」 「えっ」 「・・・俺だけイかされんの、やだ」 こんな時にもヤンキーの負けず嫌いが発動するらしい。先輩は身体を起こして、ぐん、と俺の上半身を引っ張った。 また噛みつくようなキスをされ、同時に股間をまさぐられた。 スラックスの中で完全に勃ちあがっていた俺のそこは、先輩に触れられ暴走寸前だった。 「・・・・・・がちがちに勃ってんじゃねえか」 「・・・勃ちますよ・・・そりゃ・・・」 「出せよ」 「いや、あの、ちょっと・・・うわっ」 ベルトをガチャガチャ言わせて先輩は俺のスラックスも下着も一緒に引き下ろした。拒む隙も与えられず、先輩の手が俺の性器を握った。 「んあぁ・・・っ」 「也仁・・・っ」 それから俺と先輩はお互いのものを扱き合った。あまりの快感に、声を抑えることも忘れた。 乱暴にキスをして、汗まみれになりながら、俺たちはお互いを絶頂に導き合った。 果てた後も、ソファに横たわって何度もキスを繰り返した。 もう一度勃ちそうになったのを必死で抑えた。ずっと、ずっと触れたかった仁科先輩の肌に触れていた。くすぐってえよ、と言いながら仁科先輩はそれを許してくれた。 半裸で重なり合ったまま、俺たちはいつのまにかそこで寝落ちした。
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