『週刊ワイド』20XX年1月28日号より

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 問題の動画は定点カメラとハンディカメラの二台で撮影されているとみられる。定点カメラは室内に置かれたシングルベッドを目線の高さで捉えたアングル。目隠しと猿轡をされ、両手首を拘束された細身の男性が、裸で仰向けに横たわっている。  この“kihiro”とされる人物の他に登場するのは、覆面をした一人の男のみ。覆面は両目部分だけがごく小さくくり抜かれており、口元の動きは陰影でしか判断ができない。 「シンガーソングライターのキヒロくんです。さらってきました。今から犯します」  男は躊躇のない動作でベッドの上の人物に跨がり、宣言通りの行為を進めていく。その所作にはどこか淡々とした印象があり、作業的だ。男の持つハンディカメラの映像に切り替わってもその印象は変わらず、陵辱される側の苦悶の表情だけが生々しい。  動画内で確認できる男の言葉は冒頭の一言だけであり、以降は拘束された人物の声のみが収録されている。動画の音声自体は数ヶ所途切れており、数秒から数十秒、無音の時間が続くことから、人為的に修正がなされたものと考えられる。 また、前半に比べて動画の後半で、その修正の回数が格段に多くなっている。具体的には、拘束された人物が目隠しと猿轡を外されて以降だ。素顔がハンディカメラでしっかりと撮影されており、確かに“kihiro”本人と瓜二つである。  猿轡を外されたことで言葉を発することができるようになり、撮影者を特定できる内容の発言、または撮影者との会話がなされたため――というのが、音声加工を施されている理由と考えられる。一度だけ「なんで」と呟く声がはっきり確認できる箇所がある。この言葉から、顔見知りによる陵辱行為であると推測する声もある。  動画を投稿したユーザーについて、詳細は不明。現在はアカウントごと削除されている。
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