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それからも、希尋とは何度も会った。大学生だった俺より、希尋のほうがずっと多忙だったけれど、できるだけ連絡をとった。
希尋はライブに毎回招待してくれたし、新曲が出れば必ず家までCDを持ってきた。
気恥ずかしかったが感想はできるだけ伝えるようにした。素人ながらバンド活動をしていた俺は、それが大事なことだとわかっていたから。
デビュー曲を見事ヒットさせた“kihiro”の人気も知名度も高まっていく中、俺は彼との繋がりを人に自慢するようなことはしなかった。
ただバンドメンバーが“kihiro”の曲を聴いていると知ったときは、従弟であり弟であることを明かした。
別に隠す必要もなかったし、近しい人間、それも音楽仲間が希尋の曲を聴いてくれていたのが単純に嬉しく、誇らしかった。
杉浦と白崎。二人とも“kihiro”を知っていて、売れ線だなんだと斜に構えた見方をすることもなく、素直に「良い」と言ってくれた。
そんな二人に、希尋に会ってみたいと頼みこまれれば、無碍にはできず。
何かのついでで希尋に伝えてみれば、「もちろんいいよ」と二つ返事だった。「純平の友達なら、俺も仲良くなれるかも」
だから、俺が悪かったのだ。
その後悔の念から、俺はきっと一生、逃れることができないだろう。
俺のせいだ。
希尋と白崎を出会わせた俺が、すべて悪かったのだ。
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