『週刊ワイド』20XX年1月28日号より

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 この動画について、そして“kihiro”の現在について、弊誌はたびたび各所に取材を試みてきた。その誰もがほぼ一様に言葉を濁す中、とある業界関係者からこんな話を聞くことができた。 「“kihiro”は幼い頃に両親を亡くし、親戚に引き取られたことを公言しています。その引き取られた先の息子と折り合いが悪く、例の騒動の少し前にも居酒屋で口喧嘩になり、同席していた知人に止められたとか……」  “kihiro”の戸籍上の兄が都内在住であり、たびたび顔を合わせていたことは事実のようだ。しかし口喧嘩になった相手や同席していた人物については、残念ながら特定することはできなかった。  活動休止から半年が経った今でも、我々にとって騒動の真相は闇の中である。しかし“kihiro”の安否を案じ、音楽活動再開を心待ちにしているファンは数知れず、筆者もその一人である。 「どこへもいけない心のまま/声だけが僕を守る蛹/ここからいつか自由になれたら/君を刺したい/誰より先に」――この「蛹」の象徴的なリリックは、幼い“kihiro”の孤独の発露なのかもしれない。我々の心を揺さぶった鮮烈な歌声を、再び響かせてくれる日が来ることを願う。
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