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『週刊ワイド』20XX年1月28日号より
六年前、「蛹」は多くの現代人の胸に刺さり、心を抉った。
シンガーソングライター“kihiro”のメジャーファーストシングルである。
全国のFM/AM局でパワープレイされ、週間ストリーミングランキングでの連続首位も獲得。当時十八歳の彼自身と同世代の若者だけでなく、三十~四十代からも支持を集めたのが特徴的だった。
楽曲の持つストレートなメッセージが、シンプルで美しいメロディに乗って人々の心を的確に「刺した」――それが“kihiro”の成功の要因だったと筆者は分析している。
とはいえ、筆者は音楽ライターではなく、弊誌は高尚なカルチャー誌ではない。彼の音楽的魅力について語るのは専門家に任せるとして、ここで追うのは半年前にネット上にアップされた、一本の動画の件である。
動画のタイトルは『人気歌手kihiro 監禁陵辱』。某アダルト動画サイトに投稿され、瞬く間にSNSでその存在が拡散された。元動画はすぐに削除されたが、保存されたものやスクリーンショットが未だに投稿・視聴され続けているのが現状である。
“kihiro”の所属事務所は当初、この動画の存在に関して一切のコメントを発表せず、取材にも応じなかった。騒動から七日が経過した七月三十日、“kihiro”オフィシャルサイト内にて「ファンの皆様へ」の題で無期限活動休止が発表された。
休止の理由は「体調不良」とされ、動画の件については一切触れられていない。しかしながらこの発表が、動画の人物が“kihiro”本人であることの信憑性を高める後押しとなった。
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