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灯籠の明かりで彩られた夜が漂う見知らぬ店内。
並んでいるのは本? 小物?
夜目が利かない為によく分からないが、街の中で見慣れた現代の店とは扱っているものが明らかに違う。
「こんな夜更けに、ようこそ当店へ。何かお探し物でもありますか?」
「えっ、あ、あの」
若い男性の声に動揺を表に出してしまった。
近付いた足音に備えて正面を見つめると、白いシャツに薄い上着を羽織っただけの店主が現れて俺は必死に返事を探した。
「いえ、えっと。探し物と云うか、桜の木を見ていた筈が気付いたらここに入っていて。すみません、邪魔になると思うのですぐに出て行きますから」
「邪魔だなんてとんでもない。いらっしゃいませ。ここへいらしたと云うことは、きっと何か御縁があったからでしょう。ご覧の通り小さな店ですが、良ければ少し見て行ってください」
「は、はい、あっ。えっと……」
(本当に、何の店なんだろうココは……)
言われるがままに身を置くと、俺はぐるりと一周見渡して店内に並ぶ品物に目を遣った。
骨董品と言うのだろうか。
古い絵や時計、陶器、棚に並ぶ本の背表紙は日に焼けて色が変わっているものも多数ある。
店に居る客は俺は一人。
店に居る従業員も、店主と思われる若い男性ただ一人。
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