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世界で一番可愛い
「可愛い」
小さな頃から言われ慣れてきた言葉。
背丈はさほど伸びなかったが、涼しげな目元と
ひとつひとつの顔のパーツが整っている父。
父ほどのはっきりとした顔の印象はないが
大きな瞳と主張しない鼻や口元、
骨格が華奢で 華やかな印象を持たれる母。
そんな両親から生まれた私は、
上手に父と母の遺伝子を取り入れて
少なくとも「不細工」ではない顔立ちで育った。
なので 幼い頃から
「お人形さんみたいだね」
「美人さんだね」
「可愛いね」
と言われてきたし、
何より
「世界で一番 “愛未(まなみ)”が可愛い」
と何かある度に
私とよく似た大きな瞳を細めて
肯定型の母から抱きしめられて生きてきたのだ。
お勉強が出来るとか。
運動神経が良くて 周りからみても群を抜いているとか。
発言権があって、ユーモアに長けているとか。
小学生とか中学生、とにかくガキの時は
見た目の価値よりも 何かに 秀でている事に
重きが置かれていたから
勉強も運動もユーモアも そこそこ なガキの頃の 私は、
同じガキ達の間では ただのちょっとマイペースな「マナちゃん」。
とにかく普通のマナちゃんは、
平均の偏差値の平均の普通科高校に入学。
ここから、ゆっくりゆっくり
私の世界が崩れてく。
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