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3分間、沈黙が続いた後、大庭が口を開いた。
「南田くんは、コミュニケーション苦手なクチ?」
「同期や近しい先輩とかには、とくに言われませんが」
なんとなく、会話の方向が見えた。
「やっぱそうか。俺はまだ42だけど、世代間格差ってやつ? おじさん相手に話しにくいのは分かるよ。俺も君くらいの時はそうだったし」
「はあ」
「隣に座っているのは機長だもんな。副操縦士からは話しかけにくいのも分かる」
「まあ、そうですね」
南田は相手に合わせた。
だが、ふだん仕事をする上で、相手が機長だから話しにくいなんてことはない。
大庭のは「ただの雑談」だから、会話が弾まないだけだ。
「機長といえば、雲の上の存在だもんな。分かるよ」
大庭の目が光ったように見えた。
嫌な予感がする。
「もっとも俺たちは今、二人とも雲の上だけどな! あっはっは」
南田は「落ちてねえし! いや、墜落は駄目だけど」という言葉を飲み込んだ。
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