本編

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俺の想像していた事より、遥かに未知の領域だった。 いや、正確には……瑠璃太夫がどんな存在なのか明確に知らなかったのが原因かも知れない。 「 はぁ、太夫……ッ、ンッ…… 」 「 っ…どこも、美しい…はっ…… 」 「 物好きな殿方よ。わっちのモノをしゃぶってそんなに悦ぶなんて…… 」   膝を立て座っている瑠璃の下半身に、一人の侍は顔を埋め、乱した着物から彼の陰茎を取り出してはしゃぶり、もう一人の侍は脚に口付けを落としたり、爪先を舐めていく。 自分達の立場など気にもせず、男娼である瑠璃に膝を付き頭を下げてる姿を見て、 彼が代官が似たような事をすることに滑稽だと笑っていた意味が分かる気がした。   「 ぁあっ、貶してくれ…… 」 「 どうか、尿を飲ませてほしい 」 「 金を積めばやってやりんすよ? 」 「 出そう。好きなだけ、くれてやるから 」 懐から金貨を出し、瑠璃の手元に置いた侍に、その金貨の枚数を見て瑠璃は身体を起こした。   一人の侍の髷を掴み、咥内へと陰茎を押し当てれば腰を動かす姿は美しいものでもあった。 男は悩ましげな顔をするも、瑠璃の太腿に手を当てれば、舌なめずりを漏らす瑠璃は告げる。 「 あぁ、出そうでありんす。どうぞ、お飲みなさい 」 「 んッ……ンッ! 」 瑠璃は侍の咥内で尿を吐き出し、男は嬉しそうに喉を鳴らし飲み干していく。 口を離し、熱い息を吐く侍は自らの陰茎を擦りながら笑い、 もう一人の男もまた瑠璃の身体に触れ、胸元へと顔を乗せた。 「 どうか、俺にも…… 」 「 そう直ぐにはでやせん。焦らずとも、可愛がってやろう 」 「 あぁ、嬉しき幸せ…… 」 「 瑠璃太夫、私の貧相な陰茎を虐めてください 」 「 本当、小さい割りには主張が強い駄目なムスコでありんすなぁ 」 「 っー!あっ、はい…申し訳、ありません 」 抱く相手を選ぶ、そう言っていたけど… 別の意味で遊んでるのだと理解した。  けれど、俺を抱く時よりも面白そうに笑う顔を見て胸が締め付けられた。 自身の胸元に手を添えていれば、見ていた少年は襖から顔を離し、数歩後ろへと下がる。 「 っ、この…料理…渡しててくれ! 」 「 え!? 」   何故俺が…と言う前に少年は走り去り。 足音に気付いたのか瑠璃の声が聞こえてきた。  「 誰だ?料理なら持ってくるといい 」 「 失礼致します……。料理とお酒をお持ちしました 」 此処で立ち去っても料理が冷めてしまえば、瑠璃が侍に怒られてしまうかもしれない。 本当は入りたくないが気を落ち着かせて、頭を下げてから料理を中へと運べば、男達は顔を隠すこと無く、瑠璃の脚やら手に口付けを落としていた。 「 随分遅かったが、わっちは台廻しに頼んだはずだが……? 」 「 途中で出会ったので、俺が運ばせて貰うよう頼みました 」 あの子には罪は無いと、料理を置いてから深く頭を下げていれば、瑠璃は俺の肩へと脚を当てた。 「 新入りが他人の仕事を奪うんじゃ無い。次に持ってこなければ、あの台廻しの首を刎ねる事は可能なんだ。肝に銘じておけ 」 「 ……はい 」 「 瑠璃太夫。そんな餓鬼を構わず、俺達と遊んでくださいよ 」 「 続きをしましょう。太夫 」 「 そうでありんすな……。御前はお下がり 」 「 ……失礼しました 」 此処ではどんな者でさえ、瑠璃の言葉に従う事しか出来ず、頷く以外は認められない。  立場のいい役所の者も、雇われの使用人ですら瑠璃の機嫌を損ねることは許されないんだと悟った。 静かにその場を離れて、あの台廻しに一言文句でも言ってやろうかと調理場へと戻り、探せば、外の影から聞こえた声に脚を向ける。 「 !! 」 「 はぁ、瑠璃、太夫…… 」 まだ若い少年は、瑠璃を思って一人影で自慰に浸っていた。 小振りの陰茎を擦りながら、反対の手で後孔を弄り、野菜を挿入してそれを動かしながら何度も名を呼ぶ姿を見て、声を掛けるのを止めた。 俺だけの幼馴染み、俺だけの瑠璃…… そう思っていたけれど、 行く先々で瑠璃を想う者が居ることに、どれだけ高価な華を独り占めしたいのか、自身に問いたくなる。 「( あぁ、俺は……瑠璃に独り占めされたいし、したいんだ…… )」 ずっと一緒に居たいと思った幼馴染みと再開したのに、その子が他の者にも同じ事をするから気に入らないんだ。 瑠璃には…俺に向ける好意など…無いんだ。 だから、教えるように抱く事が出来る。 「( 俺は…客と対して変わらないんだね )」 遅咲きの新造を、使えるようにしてくれてるだけであって、 瑠璃にとって俺はもう、幼馴染みという感覚はない程に興味が削ぎれてるんだと思うと、酷く心は冷たくなった。   夜空を見上げれば、朧月がまるで今の俺のようだと思った。 「( もう、瑠璃に抱いてもらうのを止めよう…… )」 俺も、客との行為を行えばきっと開き直れて、瑠璃の事以外を考えられると思ったんだ。 それには、もう十分だと言う必要がある。
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