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1.雪降る夜に
父のお葬式は雪の中で盛大に行われた。
悲しいかと言われれば悲しいけれど、母も浅緋も、父の我儘に散々振り回されて苦労をしてきたので、ホッとした気持ちも、いくばくかあったことは否めない。
園村浅緋は式場を振り返った。
雪の中、喪服に身を包んだ母は、華奢で消え入りそうで、美しかった。
困ったことがあれば、相談に乗るから、と何人もが言いに来ていたのも、何人かは下心込みだったのではないかと思う。
そんな風に思った浅緋自身も、母譲りの儚げな美貌の持ち主だ。色素の薄い栗色の髪と真っ白で透けそうな肌。さらりと長い髪は普段は下ろしているけれど、今日は喪服の和装なので品を失わない程度にまとめている。
お葬式でも2人の母子の姿は際立っていた。
お見送りも終わり、母と家に帰ってきた時には、2人ともぐったりしていた。
「疲れたわね…。」
「うん…。」
それが、父の事だったのか、お葬式のことだったのか、浅緋には判別はつかなかった。
父はいわゆる入婿だった。
その手腕を母の父、浅緋にとっては祖父になるが、その祖父である園村に認められ、会社の代表となり、母と結婚したのだと聞いている。
やり手ではあるのだが、ワンマンでもあった。
その父が亡くなることで、母と浅緋は我儘に振り回されずに済むけれど、会社のこともあるし、今後のことがどうなるのかは、まだ母も浅緋もピンときていない。
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