2.桜の思い出

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しかし、そうなると、今度は抱きしめられているこの状況をどうしたらいいのか分からない。 「泣き止みましたか?」 浅緋の頭の上からよく響く片倉の声が聞こえた。 「……はい」 そっと、彼が浅緋の身体を引き離す。 「大丈夫?」 また優しく浅緋の顔を覗き込む、その片倉の端正な顔がとても近くて、先程はきゅんとした浅緋は、今度は胸がどきどきと音を立てるのを感じた。 きっと目も真っ赤だろうし、涙でお化粧も落ちてしまっているに違いなくて、こんな顔を見られるのはとても抵抗がある。 「あ……りがとう、ございます。すみません、こんなに泣いてしまって」 急に自分の惨状に気づくと、浅緋は慌てて俯いて顔を隠す。 「いや。泣くと副交感神経が働くそうです。それによって、気持ちが落ち着いて、リラックス効果を得られるそうですよ。今日は、しっかり寝てくださいね」 すいっと眼鏡を押し上げて、まじめな顔をして片倉はそんなことを言った。 副交感神経……。 こんなことを言われたのは浅緋は初めてだ。 つい、くすっと笑ってしまう。 その顔を見て、一瞬目を見開いた片倉はすっと立ち上がった。 「お食事にしましょうか」 「はい」
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