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「お仕事は、可能ならば続けたいです」
片倉は少し考える様子だ。
「お父様のお手伝いをされていたのでしたっけ?」
こくん、と浅緋は頷く。
「あの、けれど簡単なお仕事しかしていませんけれど」
「来週からはうちのものが園村ホールディングスに伺って仕事をする予定なのですが、その人についていただきましょうか」
「いいですか?」
「あなたがそうしたいのなら。それにそちらに伺うのは信頼できる者ですから」
「はい」
「こちらがあなたの部屋です」
そう言って、片倉がキッチンの隣の部屋のドアを開ける。
実家の部屋とさほど大きさの変わらない部屋に、ベッドやドレッサー、チェストが置かれていた。お揃いの家具のようだ。
「家具は足りなかったら入れましょう。気に入らなかったら買い替えても構いません」
「はい」
白いドレッサーやチェストは女性らしくて可愛らしくて、浅緋はひと目見て気に入った。カーテンも淡いベージュに落ち着いた花柄が素敵だ。
「片倉さん」
「はい」
「お部屋、ありがとうございます。とても素敵で買い替える必要なんてありません」
「良かったです。ベッドは……ここでよかったのかな?」
耳元で、急に低い声で囁かれて浅緋はびくん、としてしまう。
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