3.『政略結婚』

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「気にしなくていいですよ」 「あの、でもそれくらいはさせてください。本当は私が起こしたりしなくてはいけないですよね」 浅緋がフライパンのフタを開けると、綺麗に仕上がった目玉焼きが乗っている。こんがりしたベーコンも、良い香りを放っていた。 「お皿は……」 「こちらです」 片倉が浅緋の頭の上のキャビネットから、大きな白い皿を取り出す。 ふと、背中に片倉の身体が触れて浅緋は固まってしまった。 「あ、失礼……」 「いえ」 おそらくシャワーを浴びてきたのだろう、ボディソープの香りがふわりと浅緋の鼻をくすぐった。 男の方って近くに来ると、こんなにどきどきするものなのかしら? 経験のない浅緋には、それがどういうことなのか分からないのだ。 「フライ返しはこちらです」 片倉はフライパンとフライ返しを手に取った浅緋を、興味深そうに見ている。 お皿の上に、出来上がった目玉焼きを乗せるだけ。 そんなことすら、近くに片倉がいるから緊張してしまう。そんな浅緋の様子に気付いて、片倉は苦笑した。 「すみません。僕のキッチンに人がいることが珍しくて、つい、見入ってしまった」 片倉はバゲットを取り出して、慣れた様子でカットしている。 「冷蔵庫にサラダが入っているので、それも皿に乗せていただいていいですか?」
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