23828人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい」
浅緋は言われたとおり、冷蔵庫まで行って大きなドアを開けた。
中は整理された保存容器が、たくさん入っている。
綺麗に並んでいるそれは、片倉の性格を表しているようだった。
昨日まで実家にいたのに、今日からこんな風に片倉とキッチンで肩を並べて朝食を準備しているのは、とても不思議な気持ちだ。
「いつも、こうやって準備されるんですか?」
「ええ。朝食は割としっかり取りますね。昼を抜いてしまうこともあるので」
「片倉さん私、明日からは準備しますから」
片倉は手を止めて、浅緋をじっと見る。
「浅緋さん」
「はい」
いつもはとても優しい表情をしている片倉に、こんな風にあまり表情がない様子で見られると、浅緋はどうしたら良いのか分からなくなってしまう。
「無理しなくていいです。それにお伝えしたと思いますが、あなたはお手伝いさんではないし、僕もできることはやる主義です」
拒絶されたような気がして、浅緋は俯いてしまった。
浅緋の父はキッチンに立つような人ではなかったので、そんな風に言ったのだが、どうやら間違っていたようだ。
「ごめんなさい」
最初のコメントを投稿しよう!