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「謝らなくていいんです。では、こうしましょうか。夜は僕は帰りが遅いし、食事を自宅で取ることはあまりできません。だから朝食はできるだけ一緒に。で、一緒に作る。どうですか?」
そう提案されると、それはとても素敵な案のような気がした。
浅緋は先程までの気持ちがすうっと楽になる。
「すごいです」
「ん?なんです?」
「そんな風に思いついてすぐ言ってくださることが」
片倉はくすくす笑った。
「そんな風に思っていただけて嬉しいですよ。これから、少しづつ馴染んでいきましょうね」
「はい」
一緒に何かしようと言ってくれたり、浅緋に合わせてゆっくり歩み寄ってくれる片倉に気持ちを持っていかれていることに、今はまだ浅緋は気づいていなかった。
事業継承のこともあり、浅緋はしばらく会社には出勤できていなかった。
先日、継承を完了し、相続関連の手続きも終わり会社に出勤すると、浅緋のいた総務部ではみんなが優しく声をかけてくれる。
「園村さん、お疲れ様だったね。もう大丈夫なの?」
「はい。ありがとうございます」
浅緋は今まで父がいた時は、社長室で父の手伝いをしていた。
片倉からは同じ業務でいいと言われているけれどそれでいいのだろうか、と迷う。
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