3.『政略結婚』

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ハッキリと槙野にそう言われて、改めてそうだったのだと浅緋は理解する。 父の遺言がなければ、片倉は浅緋と婚約などすることはなかったかもしれない。 あれほど素敵な人なのだ。 どうして今まで、そのことに考えが及ばなかったのか……。 片倉が優しいのも、婚約者だと思ってくれるのも、父の遺言があるから。 託された会社のことがあるから。 浅緋は、自分の血の気が引いていくのを感じた。そうして視界も暗くなったような気がする。 槙野はふと気づいたように、浅緋の顔を見た。 「なんだ、驚いたような顔をして。知っていて婚約したんだろう?」 「……はい」 「じゃあ、驚くことではないと思うが。指輪もしているんだな」 そうして槙野は、浅緋の左手を無造作に手に取る。 「ヴァンクリか。意外と地味だな。もっといいやつをねだれば良かったのに。奴ならもっと高いものでも買えるぞ」 浅緋は指輪をねだった覚えはない。 片倉が婚約するから、とプレゼントしてくれたのだ。 だから、地味とも思ったことはない。 浅緋は取られた手を引いた。 そうして、その左手薬指をきゅうっと握る。 「あ……なたがどう思おうと勝手ですけど、私には大事な指輪なんです!」 「片倉がどう言ったかは分からないけれど、俺はあなたのことは認めていない」 認められなくても、仕方ないとは思う。
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