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実際に浅緋は何も出来なくて、会社のことも顧問弁護士や片倉に任せてしまっている。
そうして、グループの中でも一番重要な園村ホールディングスでも、できることは何もなくて、ここでこうしているのだ。
それでも、こんな風に認めていない、とはっきり言われるとは思わなかった。
しかも、片倉が信頼している、と言っていた人物に。
「あなたのことは認めてはいないが、片倉のことは信頼している。片倉に言われたから、この会社のCEOなんてものを引き受けたんだ。任された以上は俺は俺にできることをする」
浅緋にできること……。
浅緋は考えて、そして頭を下げた。
「よろしくお願いいたします」
今、浅緋にできることはそれだけだ。
頭を下げ、片倉の信頼する槙野に会社を頼む。それだけしかできない。
その真っ直ぐな言葉に、一瞬槙野は言葉を失っていたが、浅緋に挑戦的な瞳で笑いかけた。
「分かった。あなたがそうやって言うのなら頼まれてやろう」
けれど、槙野は浅緋には仕事をほとんど依頼しなかった。
きっと嫌われているのだと思う。
それでも、浅緋は構わなかった。
槙野は仕事は本当に優秀だったから。
父の元で働いていた人たちの中には、もちろん優秀な人もいたけれど、古参だからと言ってそれにあぐらをかいているような人物もいた。
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