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就任した時、社長とは呼ばないで苗字で呼んでください、と槙野は宣言していた。
だから本人に向かって社長とは呼ばないけれど、社外で話をする時はみんな社長と呼んでいる。
「槙野さんは片倉さんに依頼されて社長になったとおっしゃっていたので」
ん?と周りが顔を見合わせている。
「それって、今の園村ホールディングスのスポンサーじゃないの?」
「そういうことになるんでしょうか?」
「グローバル・キャピタル・パートナーズの片倉さんよね?」
そうだ……確か以前にもらった名刺にそんな社名が入っていたような気がする。
「はい。そうです」
「え?!あの?!」
片倉のことを『あの』と言って同僚は浅緋の方に大きく身を乗り出した。
「はい……」
『あの』とはどういうことなのだろうか?
「あの……?」
「やり手でも有名なんだけど、若くして頭も良くて、お金も持っているし結婚したい男性ナンバーワンとも言われていて……」
浅緋が緩く首を傾げたので、同僚は口元を押さえられている。
「ま、でも今は園村さんの婚約者なんだもんね!」
「はい……」
そんなに有名なのだとは思っていなかった浅緋だ。確かにあのマンションはすごいとは思ったけれども。
片倉自身も有名だなんて、浅緋は思っていなかった。
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