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4.黒い大型犬
相変わらず朝の日の光の中で見る片倉は、何と言うかとても眩しい。
とても優しいし、浅緋が上手に目玉焼きを焼けたりすると褒めてくれたりする。
片倉のように理知的で端正な顔立ちの人に、にこっと笑って『今日も上手にできましたね』と褒めてもらえるのはとても嬉しい。
少しづつ生活のパターンも分かってきている。最初に言っていた通り片倉は仕事柄、夜は遅くなることがほとんどだった。
そんな時は会社で食事を済ませてくるのか、帰りに済ませて来るのかは分からないけれど、夜は自宅で食べない。
そして、夜がどんなに遅くても、朝は早く起きる。
軽いジョギングをして、それから浅緋が起きて一緒に朝食をするのだ。
「片倉さん」
2人で生活を始めて2週間ほども経った頃だろうか。
浅緋が話しかけると、片倉からの返事がない。
「片倉さん?」
「浅緋さん、それ、やめませんか?」
キッチンのシンクにもたれて片倉が柔らかく微笑んでいた。
「それ?」
浅緋はなんのことだか分からない。
「片倉さん、です。結婚するのですよね?いずれは浅緋さんも片倉さんになると思うのですが」
確かにそうだけれど。
分かってはいた。
頭の中で分かってはいたけれど、なかなか実感が湧かないのだ。
しかし、片倉の言う通りではあった。
「確かに、そうですね」
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