4.黒い大型犬

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「知っていますよね?僕の名前」 それはもちろんだ。 こくん、と浅緋は頷く。 「呼んでみてくれませんか?」 改めて言われると、なんだかとても恥ずかしいような気がするのだけれど、確かにこのまま苗字で呼び続けるわけにはいかない。 「慎也、さん……」 「はい」 それだけなのに、浅緋は顔がとても熱くなってしまった。 また、こんな赤くなってしまって本当に恥ずかしい。 「浅緋さん、もう一度呼んで?」 「え?」 「すごく嬉しいんですよ。名前を呼ばれて、浅緋さんにそう呼んで欲しかったんだなって気づきました。思ったよりも嬉しかったので、もう一度呼んでほしい」 そんな風に言われると浅緋も恥ずかしいけれど、片倉が本当に嬉しそうなので、呼んでみようと思ったのだ。 「慎也さん」 今度は顔を伏せないで、ちゃんと呼んだ。 片倉はにこっと笑った。 そうして、浅緋の頭をふわりと撫でてくれる。 「よくできました」 褒めてもらえて嬉しい。 けれど、これでいいのだろうか? 「そういえば、さっき呼ばれましたよね?何か言いたいことがあったのではないんですか?」 そうなのだ。
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