4.黒い大型犬

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「はい!」 「じゃあ……」 そう言って繋いだままの手を引かれて、浅緋は緩く片倉にもたれかかってしまう。 浅緋の手を握っていた手はそのまま、浅緋の背中に回された。 抱きしめられている!! こんな風に片倉と密着することは初めてで、ただ身体を固くすることしかできない浅緋だ。 しかも、心臓の音はばくばくと耳元に響いて、顔も熱い。 緊張で指一本を動かすこともできないのだ。 少しだったような気もするし、長い時間だったような気もする。 実際は数秒だったのかも知れなかった。 以前、浅緋が泣いた時も片倉は抱きしめてくれていたけれど、その時よりはるかにどきどきするのはなぜなんだろうか? 「浅緋さんが、ここにこうしていて下さるだけで僕は十分なんですけどね」 片倉はどんな時も優しい。 「何か、ありましたか?」 頭の上から聞こえる声に、浅緋はどきりとした。 それは胸の高なりなんてものではなくて、見透かされたことによる心臓の鼓動の音だ。 先日、槙野に『あなたを認めてはいない』と言われたことは、浅緋の心に徐々に重くのしかかってきていた。 どう考えても、そう言われても仕方がないからだ。 それでも、この優しい人に心配を掛けたくない。
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