4.黒い大型犬

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「そうだな。だから、こんなところで男と飯なんか食ってるわけにはいかないんだな」 浅緋の頭の上から降ってきた不機嫌な声の持ち主は、槙野だった。 「社長!」 その場にいた女性達がはしゃぐ。 槙野は外向けの笑顔を向けた。 キリリとしていて整った顔も、品の良いスーツ姿も女性がはしゃぐのには十分な姿だった。 「ご存知の通り大事なお姫様だからね、連れて帰ってもいいかな?」 ここは奢るからさと槙野は店員を呼んで、皆にはにっこりと魅力的に笑う。 その場の女性達の目がハートになった。 「いいんですかぁ?」 「もちろん。大事な社員だからね。園村さんは連れて帰るけれど、皆は楽しんで」 浅緋は槙野にやや強引に肩を抱かれて、その場を後にする。 「園村さんっ!ごめんね、考えなしで」 池田が顔の前でごめんねっ!と合掌している。 浅緋はそれに向かって、なんとか笑顔を返したのだった。 「いえ!こちらこそ、ごめんなさい」 個室を出た後、浅緋はそっと槙野から距離を置く。 槙野はむっとしたようだった。 「なんだ、その態度は」 「あの……私、ごめんなさい」 「何に対してのごめんなさい?今の失礼な態度?それとも、よもやと思って店を探させたら、男を侍らせていた件?」 槙野の冷ややかな声が、レストランのエントランスに静かに響く。 「っ……侍らせてなんて、ないです。私も知らなかった……っ」
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