9.優しくて悲しいこと

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池田がそう言うと、浅緋は説明しようと口を開こうとして、迷っている。 浅緋が照れたような様子で、少し俯くのを見て、池田は胸がきゅん、とする。 浅緋さん、可愛いっ。 あー、片倉さんのこと、大好きなんだろうなぁ。 そんなことが伝わってくるような仕草だ。 一方の浅緋は胸がとてもドキドキしていた。 自分の打ち明け話などあまりしたことはない。 すごいわ、みんなこんなに緊張しながらお話してくれていたのね。 ……そうでもないはずだが、人見知りがコミュ障一歩手前までいきかけている浅緋のことなので、そんな風に考えてしまうのも仕方のないことなのだろう。 それでも、決意をして浅緋は口を開く。 「あのっ……、片倉さんはとても優しいんです」 「うん」 それはさっき聞いたけどねっ! 一生懸命、浅緋が話そうとしてくれているのは分かるので、池田は急かすことはせずに笑顔を向けた。 頑張れっ!浅緋ちゃん!! 「と、とっても忙しくて、夜は帰りが遅いんです」 「あー、そうだよねぇ」 通常は金融機関が行うような業務をしている片倉の会社なのだ。 大きなお金が動くこともあるだろうし、その緊張感や繁忙度は計り知れない。 「それでも、朝は一緒に取ろうって言ってくださってて、一緒に食べるんです。それで、一緒にキッチンに立ってお食事を作りながらお話したり……パンが美味しいね、とか昨日のが美味しかったからまた買ってこようね、とか……」
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