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第三項 用語について:プリンチェプス
〇プリンチェプスprinceps
この解説では当たり前のように「初代皇帝」「2代目皇帝」とか書いているが、本文中には「皇帝」という言葉は出てこない。ローマ人は「独裁」への嫌悪が非常に強かったらしい。故に、アウグストゥスは「市民中の第一人者(プリンチェプス)」という立場を死ぬまで崩しておらず、これはティベリウスも同様である。
ローマの「皇帝」は、先帝から「この人が跡継ぎだ」と言われただけでは十分ではない、非常に判りにくいものだったようだ。アウグストゥスの死でティベリウスが「第一人者」になった時、元老院が可決したのは、「ティベリウスがアウグストゥスの後を継いで第一人者になる」ということではなく、アウグストゥスが持っていた「護民官特権」「全軍指揮権」などの種々の権限を一つずつ数え上げて、改めてティベリウスに与える、ということだった。「皇帝」は、勅令の形で暫定措置を命じる事はできるが、永続的な「法律」にするためにはこれも元老院の議決を得なければならない。
かといって「第一人者」というのも非常にこなれない妙な言葉である。「プリンチェプス」は「元首」、「プリンキパートゥス」は「元首政」という訳語を通常当てるが、ここでの「プリンチェプス」は役職名ではなく、どちらかというと一種の称号に近い、という気がする。イメージとして深川的に一番近いものを探すなら、平安時代の「一の人」というやつだろうか。「元首」としてしまうと、他の役職名「執政官」「法務官」といったものの一種のような印象になってしまうような気がして、作品中では「第一人者」で統一した。
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