第一項 ローマの名前について:男性名

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第一項 ローマの名前について:男性名

〇男性の名前 【基本形:ティベリウス(個人名)・クラウディウス(家門名(氏族名))】  個人名と、その個人が属する氏族の名前。ただし、男性に限る。  そしてこのクラウディウス一族が大変の繁栄し、氏族名だけではくくりが大きすぎる、となった時に、「家名」が追加される。 【発展形一:ティベリウス・クラウディウス・ネロ(家名)】  そんなわけで、ある程度由緒正しい家柄の人間であれば、個人名・家門名・家名の三つを持つ。それほど由緒正しくない家に生まれた人間は個人名と家門名の二つしか持たない。  そういう経緯なので、添え名的に生まれたと思われる家名は結構いい加減というか、お手軽に付けられた印象のものも多い。「ネロ」→「剛毅な」、「エノバルブス」→「赤毛」、「カエサル」→「象」(諸説あり)など。「剛毅な」クラウディウス、「象の」ユリウス、といった具合に呼び分けたのだろう。  その他の人名の例を少しだけ挙げれば、ガイウス・ユリウス・カエサル、ルキウス・コルネリウス・スッラ、グナエウス・カルプルニウス・ピソといった具合である。彼らは実在の由緒ある貴族で、全て個人名・家門名・家名の順になる。  カエサル家に養子に入る前のアウグストゥスはガイウス・オクタウィアヌスといい、二つの名前しか持たなかった。これは「オクタウィウスさんの息子(=オクタウィアヌス)」ないし「オクタウィウスさん家のガイウス君」で十分通用したからである(多分)。  さて、主人公に戻ろう。このティベリウス氏が、養子縁組によってユリウス(家門名)・カエサル(家名)家の養子に入り、更に養父の「アウグストゥス(至尊者)」という尊称(添え名)を受け継いだ場合、フルネームは以下の通りになる。 【発展形二:ティベリウス(個人名)・ユリウス(家門名)・カエサル(家名)・ネロ(元の家名)・クラウディアヌス(元の家門名)・アウグストゥス(尊称)】  別にこれに「イムペラトル(総司令官)」とか、「ディヴィス(神君)」とか、いくら尊称を加えようがそれは自由だ。名前を呼んでいる間に井戸で水死しそうな長さである。
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