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第三項 用語について:イムペラトル
〇イムペラトルimperator
ローマが「常備軍」を持ったのは、紀元前百年頃の出来事である。それまでは戦争のたびに有産市民を集め、軍団を編成していたのだが、この頃から「兵士」が一つの職業となり、有給となった。それまでは権利であり義務であったのだが。
そしてこの軍団兵たちを指揮するのが、「イムペリウム=軍団指揮権」を与えられた「イムペラトル=軍団指揮官」たちだ。ローマの将軍たちの「指揮権」は、必要に応じて、戦線を限って与えられる。(故に、ゲルマニア戦線を戦っていたティベリウスが、パンノニアで起こった属州の反乱を鎮圧しようとすれば、改めてこの戦線に対する「指揮権」を元老院によって認めてもらわなければならなかったわけだ。)いわば国会議員が指揮権を与えられて軍を指揮するようなもので、職業軍人ではない。また、「イムペリウム」を与えられるためには、基本的には「執政官」や「法務官」を経験する必要があった。
アウグストゥスが「イムペラトル」の称号を永続使用する権利を持つ、というのは、この「イムペリウム」を、全軍団に対し、永続的に持つということだ。この語は後に「エンペラー」=皇帝の意にもなる。(余談だが、「カエサル」は「カイザー」や「ツアーリ」などに転じ、これも皇帝の意となった。)作品中では皇帝を「最高(全軍)司令官」、将軍を「総司令官」、その他を「司令官」として区別しているが、「最高司令官」という言葉は(多分)ない。アウグストゥスが持つ特権「イムペリウム・プロコンスラーレ・マイウス」も、「全軍最高指揮権」は意訳で、直訳すれば「執政官格指揮大権」だと思う(別に「大指揮権」でもいいが)。「プロコンスラーレ」は「執政官(コンスル)を経験した人(「プロ」は「前」の意)」、マイウスは「大」である。
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