一学期が終わる

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一学期が終わる

「とにかくいまは頑張ること。僕にはこれしか言えない」  一学期の終業式のあと、三年一組の教室で担任の友也(ともや)がだらだらプレッシャーをかけてくる。教室は蒸し暑く、それだけでもイライラしてくるのに友也の説教じみた正論がうざすぎて変な汗が肌に滲んでくるのがわかる。  明日から夏休み、といっても高校三年の夏休みは休みじゃない。受験勉強に追われ、体力がつづく限り走りつづける、過酷なロードレースだ。 「この夏、君たちの未来が決まると言っても過言じゃない」  そんなこと言われなくたってわかってますよ。  胸の内がもやもやしてきて小さく息を吐く。  母子家庭の私が目指す大学は家から通えるところにある。なぜそこを選んだのか、それは生活費が浮くからという単純な理由だけじゃない。  高校入学したてのころ、近くの小学校に学童保育のボランティアに入ったことがある。そこで子どもたちに囲まれ、遊んだり、勉強を教えたりするうちに、先生になって子どもたちに授業をしてみたい。そう思うようになった。  その大学には教育学部がある。
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