♯01.探し物の行く末に

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「ご、ごめんなさいっ。わたしてっきり、あなたがこのまま歩いて行くのかと思って」  彼女はまごつき、両手を口元に添えた。  俺はそんな彼女をジッと見つめた。  美人だと思った。何処ぞの貴族娘を思わせる容貌なのに、その出で立ちは町娘に相違ない。  胸元まで伸びた栗色の髪が綺麗で、無意識に手を伸ばしていた。 「あの……?」  髪に触れられた事で、彼女は困惑していた。 「勘違いをさせてすまない。ちょっと、探し物をしているんだ」  手の平の髪をサラリと流し、小さく笑った。探し物、と言って彼女は眉をひそめる。 「ああ。俺にとって大切な人の形見。こんな所だから、見付かるかは分からないが。さっき橋の上から落としてしまって……」  言いながら彼女に背を向け、宙を指差した。大きな橋の欄干が見える。今しがた、丁度あの場所に立っていたのだ。  再び、目当ての場所に歩を進めた。膝まで捲ったスボンは、その甲斐もなく、水の揺れで(もも)まで濡れている。
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