3780人が本棚に入れています
本棚に追加
慧君がそんなことを聞くなんて、いったいどうしたの?
「いや……いいんだ。好きな人くらいいるに決まってるよね」
そう言って、下を向いた。
「慧君、どうしたの? 大丈夫? さっきから顔色悪くない?」
いつも穏やかな慧君がこんなにもぎこちなくて、何だか本気で心配になるよ。
「大丈夫だよ。別に体調は悪くないから……」
「そう……なんだ。だったら良いんだけど……」
こんな感じのやり取り、慧君と出会ってから初めてだよ。
それにしても……
今の慧君の瞳、いつも以上に潤んでいて、思わず見惚れてしまいそうになる。
とっても綺麗なこの瞳に、このままずっと見つめられたら……釘付けにされて動けなくなるだろう。
そう思った瞬間、私は思わず目を逸らした。
そして、小さく息を整えてから……また慧君を見た。
憂いを帯びた大人の男性の表情に、ドキッとして心が揺れ動く。
同じ年齢の慧君のことを、今までこんな風に感じたことなかったのに……
今日の慧君は、本当に変だよ……
最初のコメントを投稿しよう!