転校初日の洗礼3

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転校初日の洗礼3

その時、取り巻きを連れた長身の男が食堂に現れた。 「何の騒ぎ?」 「あ、ユキさん。いや1年に活きのいい転入生が入ったんですよ。それで皆色めきだっちゃって」 そう言ってその男が忠治の方を指差した。 「だってほんとだもん。よく周り見てごらんよ」 忠治は一樹の言葉に周りをよく見渡す。確かにポーっと顔を赤くして見る奴も居ればどういうつもりか舌舐め摺りをする奴等も……。 どっちにしても熱いネットリとした視線ーーー 【一体どうなってんだ、この学校は】 「てめぇ等ジロジロ見てんじゃねぇ!ぶっ飛ばすぞ?!」 忠治の一喝に食堂内が静まり返る。 「これはこれは。ほんとに活きのいい」 ユキは顎に手を当ててニヤリと笑った。 【落とし甲斐のありそうな土佐犬ワンコ、発見!!】 「転入生って言ったよな?」 「はい」 「ふぅーん。なるほどね」 忠治の一喝にビビって視線を逸らし食事を始める周囲に忠治は鼻息を荒らげる。 「まぁまぁ。"視線"なんて直ぐに慣れるって。冷めちゃうから食べよ?ね?」 一樹に宥められ忠治は椅子に座る。 【慣れる?慣れる……だと?そういう目で見られる事自体が嫌だってんだよ。男子校ってそんなもんなのか?ばっちゃん、何で死んじまったんだ?俺、これから3年間もこんなとこ……居たかねぇぜ】 忠治はハァと溜息をつくとポテトにフォークをぶっ刺してモシャモシャと食べた。 ____________ 「ようこそ。B棟の寮長をしている、3年の呉崎達也(くれざきたつや)だ。よろしくね」 ガタイのいい、いかにも体育会系爽やか男が忠治の両手を馴れ馴れしくガシッと握ってきた。思わずゾッとして忠治はその手を振り払う。 呉崎は振り払われた事を少しビックリしていたが、それでもニンマリと笑った。 「君の荷物……届いているよ?早速部屋に案内しよう」 そう言うと2階の1番奥の角部屋へ忠治を連れて行った。 「ここだ。2人部屋っていうのは聞いてるかな?実はほぼ同室者は同学年って決まっているんだけど、君の場合中途だから半端になってる2年生となんだけど……いいかな?」 「別に気にしないっす」 【仲良くする訳じゃなし。寝て起きるだけの部屋だろ?】 「なら良かった。しかし俺としては不本意だなぁ。相手が相手だけに……」 そう言ってニンマリと忠治を頭の先から足の先まで見る。 「は?」 「いや、何でも。じゃあ同室者に挨拶をしようか」と言って呉崎がドアをノックをした。 「俺だ。いいか?」 「……」 返事はないが呉崎はドアを開ける。 忠治が覗きこむと茶髪を頭上で纏めた男がベッドに座り、もう1人の華奢な生徒を向かい合わせに膝に乗せて熱いキスを交わしていた。 【は……はい?】
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