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転校初日の洗礼2
そうこうしている間に昼になり眼鏡の青年が忠治に声を掛けてきた。
「赤城くん、食堂の場所知らないよね?一緒に行こう?」
「あーっと……」
何て呼べばいいのか悩んでいるとその青年がフフフと笑った。
「僕は一樹。木村一樹(きむらかずき)、よろしくね?」
「……よろしく」
「行こ行こっ」
一樹は嬉しそうに忠治の手を引く。
【あんまつるむのは好きじゃねぇんだけど……。まぁいいか。何かコイツ相手だと調子狂うぜ】
大広間の食堂に着くと流石に全寮制である。各学年の男ばかりが尋常じゃない人数で集まっていた。
さすがに全国の都道府県から集められたマンモス校ならではの光景である。
「オェッ、何か人酔いしそう」
「大丈夫?赤城くんは意外にデリケートなんだね」
忠治の言った言葉をそのまま受け取り一樹はニコニコ笑う。
【いや、そういう意味じゃないんだけど……ね?】
「和洋中……何でもあるよ?バイキング方式。基本メニュー以外のサイドメニュー……例えばデザートとかスナック系ジュース系のみ別料金が掛かるシステムだよ。僕の今日の気分はぁ…… 。今日は和食かなぁ。赤城くんは?」
「お……俺?俺はガッツリ洋……」
「じゃあ後でね?」
そう言うと一樹は和食コーナーへ向かった。忠治は洋食コーナーへ行き、一樹を見ていると背の高い男子生徒の中でトレイを持ちチョロチョロとしている。
ネズミみたいで思わず忠治はブッと吹き出した。その時、一樹の後ろに回った奴がいきなり一樹の尻を撫で上げた。
【げっ……】
真っ赤になる一樹を無視して触りまくっている。
【あの野郎っ。わざと触ってやがる。一樹の奴が大人しくしてるからっていい気になりやがって】
忠治は一言物申しに一樹の方へズカズカと歩いて行った。するとーーー
「先輩、お尻のお触りは1回500円ですよ?」
「はいはい、500円。ほんと木村はちゃっかりしてるよ」
そう言ってその先輩は一樹に500円玉を渡す。一樹は「どうも」と言ってその金を受け取った。
【何ぃぃぃ?!】
それを見て固まっている忠治を一樹が見つけた。
「あれ?赤城くんどうしたの?やっぱり和食?」
ケロッとして微笑む一樹に「い……いや、何でもねぇ」と言って洋食コーナーへ戻って行く忠治を見て更に「変なの」と言った。
【お前が変だろっ】
忠治が洋食コーナーから戻って来ると一樹が立ち上がって手を振った。
「あ……。赤城くんこっちこっちー」
【見えてるっちゅうに】
とりあえず忠治は一樹と向かい合わせに座った。
「頂きまぁす」
華奢な割にはパクパク食べる一樹を見ながら忠治はチキンを口に咥える。ふと、忠治の背中に視線が突き刺さり振り返ると見ていた奴等が視線を逸らす。
【……何だよ。ここでもか?】
「どうしたの?」
「ここにいる連中は新参者をジロジロ見る習性でもあんのか?」
それを聞いて一樹はクスッと笑った。
「ったく食いにくいったらねぇ」
「あはは、まさかぁ。赤城くんが魅力的だから皆見るんだよ」
忠治は思わずブーッとスープを噴き出した。
ゲホゲホ噎せ返る忠治に一樹は背中を摩りながら「赤城くん?ちょっとそれは……汚いかもぉ」と言った。
「てめぇが変な事、言うからだろうがっ」
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